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上流の医療®

上流の医療

 先月都内の研究会で「病気の上流としてのバリア機能障害」と題して講演させていただきました(図1)。その後、順天堂大学耳鼻咽喉科同門会誌に寄稿した文章を紹介させていただきます。耳鼻咽喉科医も「上流の医療」に寄与できると思っています。
  「上流のビジネス」という言葉が少し前に流行ったのをご存じの方もおられると思います。この夏、ネットでTED Conferenceの「病気の上流を診る医療」というプレゼンを拝聴しました(図2)。演者のDr. Risi Manchandaは、ロサンゼルス中南部で医師として働いた経験から、難民のごとく押し寄せてくる患者の現在の病状を治療することより、perilous waters(危険水域、図3)を引き起こす様々な問題を解決することが大事であると唱えています。これは、日本の厚労省の生活習慣病対策室の模式図(図4)でも示されています。 川上から流され溺れかけている人を次から次へと助けることは、医療の現場では大変重要なことではありますが、その上流には、そこまでに至る様々な問題が山積しています。それらを是正することにより初めて、メタボリックシンドロームでみられるようなドミノ現象を止めることができます。
 我々耳鼻咽喉科医はこの問題に関与できるでしょうか。現状は、流され今にも溺れようとしている人を助けることに追われ、あるいはその状態を科学することにやっきになっていることは否定できないと思います。例えをあげます。難治性副鼻腔炎に伴う 鼻茸を手術しまたその摘出検体を解析することは大変重要なことです。ただ、それは成れの果てのお化けのような存在であるかもしれず、より川上での究明が求められ始めていると思っています。偉そうなことを書きましたが、私が最近研究テーマとしている上皮バリア障害は、様々な粘膜疾患の上流にあたると考えています。外界と接し生体のフロントラインとして24時間働いている気道粘膜バリア機能の研究成果をベースとした治療をおこなうことにより、内科医では行えない耳鼻咽喉科医の手による「上流の医療」、「上級の診療」の実現を夢見ています。その日はそこに来ています。
 
図1 「病気の上流としてのバリア機能障害」タイトルスライド
 
図2 病気の上流を診る医療(Risi Manchanda)
 
 
図3 perilous waters(危険水域、Risi Manchanda) 
 
図4  生活習慣病のイメージ(厚労省生活習慣病対策室)
 
 
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