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耳鼻咽喉科臨床 研修ノート

上皮は考える#4 バリア機能

 生体の最前線である上皮は常に様々なストレスを受けているがそれに対する防御機構としてバリア機能が備わっている。
これは、輸送機能あるいは透過性の裏返しの現象であると考えられる。すなわち、イオンチャネルはイオン透過性を担っているが、電気的バリア機能としても機能していると考えられる。
最近のアレルギー研究の進展から、このバリア機能の破綻が、アレルギーを引き起こす始まりであると考えられている。
【出典】三輪 正人, 三輪 真由美著: 「図でみる免疫学のABC」 免疫系の仕組みと基礎 獲得免疫. JOHNS 2013, 29(3):293-296. 
このことは、すでに皮膚科領域では周知の事柄だったようである。
アトピー性皮膚炎のもっとも軽い病期である皮疹のない前駆期では、炎症症状に乏しく乾燥症状のみが認められる。言い換えれば、炎症細胞の浸潤が起こらない前段階としてドライスキンの状態が存在することが知られている。花粉症でも同様遠藤、小澤らには飛散前の非特異的炎症状態が存在することを以前から提唱している。
また、近年の順天堂の小川、奥村、池田、高井らの実験をはじめとする研究の進展から、アレルゲンそのものがIgE非依存性にバリア機能を撹乱し、Th2を誘導する機序も明らかとなっており、アレルゲンの感作は表皮のバリア機能の破綻により二次的に惹起される現象であるとする可能性が唱えられている。その一つの根拠として、ケラチン形成に必須であるフィラグリンといわれる蛋白の表皮における発現が、損なわれていることが証明されている。