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耳鼻咽喉科臨床 研修ノート

上皮は考える#6 塩化亜鉛、ルゴール、グリセリン

 これらは、耳鼻咽喉科クリニックの日常臨床で一般的に使用されてきた薬剤であるが、病巣の粘膜上皮に働いて効果を発揮していることは間違いない。古くから記載されている塩化亜鉛の組織収斂作用の機序として、電気的バリアの増強が関連している可能性がある。
 上咽頭の塩化亜鉛処置は、古くは医科歯科大学の堀口らにより、最近では千葉の杉田らによりおこなわれている。堀口によりおこなわれた高濃度の塩化亜鉛の塗布は、粘膜のablationを起こすと考えられるが、より低濃度にかつ中性化することにより、バリア機能が高まり、過分泌状態が是正されることを、我々は確認している。
 グリセリンは、粘膜をコートすることにより電気的バリアの増強がおこることは容易に推察されるが、ルゴールは、その成分中に含まれるヨードがクロライドチャネルを活性化させ、最終的に分泌を増加させるのではないかと思われる。過分泌状態の炎症病巣には塩化亜鉛が、また分泌低下にある炎症病巣には、ルゴールの処置が適している可能性が示唆された。
 また、咽喉頭酸逆流症の病態改善に、至適な塩化亜鉛の局所投与(喉頭注入)が有効である可能性を示唆する結果も得ている。