耳鼻咽喉科領域の上皮は、ほとんどの場合容易に直接タッチできる。われわれは、外来、病棟などで、常に耳、鼻、のど、頸部を見て触っている。その過程は、上皮細胞そのものを治療しているといっても過言ではない。
祖父あるいは父のクリニックの外来診療を間近にみていた子供の頃、あまり魅力的に感じなかったこれらの処置そのものが、実は正統的な耳鼻咽喉科診療であり、また関連他科の中で埋没しない耳鼻咽喉科医としての生き残る道であると最近思うようになった。
昨今、院内感染防御などの視点から、大学などの教育機関で局所処置の機会が減少している嫌いがあるのは、耳鼻咽喉科の明日を考える上で不安要素の一つであると思っている。しかしながら、ただ漫然と処置をするのではなく、それぞれがどのような機序で効果を発揮しているのかを見極めるのが大切であり、そのエビデンスを明らかにすることを目的とする基礎研究が、新規局所治療の開発として実を結ぶことになると確信している。
このような研究に現在研修中の耳鼻咽喉科医がより一層関わり、From Clinic to Bench and-Backの観点から、重要な知見を次々と発表されることを願っている。