以前所属していた医局の同門会誌に、 現職中に寄稿した文章です。偶然にもこの年からオープンアクセスができなくなりました。専門医制度など変わりつつある今、あまり古くなってもと思い、アップいたしました。ご笑覧ください。
世の中点数
どうしたわけか不勉強者の私がいまだに大学という伏魔殿にいます。京都の大学から渋々帰って跡を継いで「ここではやるものではない」が口癖だった親の影響もあるかと思いますが、祖父からの耳鼻咽喉科医院をつぶしました。 入局年次で寄稿する順になっている由、前から思っていることを少しつぶやいてみます。
世の中やはり点数です。学生の間はテストの成績、学者の世界ではインパクトファクターおよび競争的資金の獲得額、外科医は手術件数でしょうか。それをどう伸ばすかが肝心ですが(右肩上がりでないといけません)、自分自身だけの問題とは限らないので、やっかいです。最近は教育に対する貢献度も点数化する動きも出ています。ただ、このような試みは、所詮一つの側面を捉えていることに過ぎないと思います。
現在の保険診療制度がいつまで続くかは知りませんが、30年間地方の審査委員をつとめていた父親の口癖が「基準は全て公開しないであいまいにしておくのがいい」でした。審査基準を全て公表すると必ず悪用して点数を不当に請求する者が現れるというのです。点数の評価にはこの危険性がついてまわります。点数至上主義となるあまり、そのことだけのためになりふりかまわずできてしまう『頭のいい人』がどこの世にも存在します。
日耳鼻の専門医試験は、「耳鼻咽喉科専門研修カリキュラムに従い臨床研修終了後4年以上の専門領域研修を経たものが受験資格がある」と言われています。今まで3つの大学に在職してきましたが、 研究第一主義の医局では(実際これは一つの売りなのですが)、筆記試験で判定される合否はともかく、4年で耳鼻咽喉科医としての力を身につけるには無理だと実感しています。また、「各人の個性を引き出し、自己学習の意欲を促す」こともなかなか難しいようです。大学はまだ社会にでていない未熟者が学ぶところという側面があることは否めません。そこで「教育」の出番となるのですが。。。
やはり既に「社会人」となって世の中の荒波を乗り越えておられる同門会の諸先生のご指導を仰がざるをえない部分が大きいと考えます。お忙しい中恐縮ですが、大学現医局員に対して今後ともより一層のご教導のほど何卒よろしくお願い申し上げます。
最近は多少違った考え方もしています。やはり、子を持つ親としては、どんな手段を使っても、いい点数をとってほしいと思うときもあります。
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