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上流の医療®

医学はわからないことだらけ(その3)

―開業7年目を迎えてー

今年大学の同門会誌に投稿した文章から少し引用させていただきます。

開業2年目で直面したコロナ禍初期、マスメディアを通していろいろな専門家の意見を拝聴する機会がありました。予測という観点からは、当たっていないことも多かったとお考えになる方も少なくないのではないでしょうか。今年(2025年6月8日)のテレビ番組(「そこまで言って委員会NP」、読売テレビ)で、あの尾身茂先生が「新型コロナワクチンにはあまり感染予防効果がなかった、重症化予防効果はあったものの若い人には打たなくても関係なかった」と発言していたのには驚きました。ウイルスの特効薬はワクチンしかないという医学的常識を覆しかねないお言葉ですが、感染予防の点など本当は未だにわからないことだらけかもしれません。

名著「開業医の正体」(中公新書ラクレ、2024年)の中で、松永正訓先生は、「ガイドラインから外れた医療は怖くてできない」「医療で一番大事なのは診断である。診断がつけば治療はほぼ自動的に決まる」と述べています。この本は開業医の現代のバイブルといってもいいくらい素晴らしく貴重な記述が随所にみられますが、これらの部分はどうでしょうか。

診療ガイドライン策定の根拠となるEvidence -Based Medicineの重要性は周知のごとくです。一昨年耳鼻科の雑誌に寄稿した「狭き門より入れー―Fact-Based Medicineの可能性―」やこのブログでも述べていますが、ガイドラインは国により様々です。いわゆるガイドラインは、その国のいろいろなパワーが入り交じって形成されているといっても過言ではないでしょう。

神戸の岩田健太郎先生の「感染症は実在しない」(集英社インターナショナル新書、2020年)の中で、あなたのインフルエンザウイルスはわたしのインフルエンザウイルスとは違うという趣旨の記載がみられます。病気という現象とウイルス本体は全く異なるものですが、病気そのものも同じ診断病名でも人によって異なる対応が必要となってくる可能性があります。私たちは、住環境、食環境だけではなく、生まれてから現在に至る流れも様々です。同じケージの中にいて同じ餌をたべているモルモットやマウスと違います。今にいたるそれぞれの方の上流、背景、前提を理解しながら、それぞれの方の治療について患者さんご自身時には患者さんのご家族と共に考えたいと思っています。

医学だけではなく科学全般についてもわからないことだらけではないでしょうか。以前このブログでも書きましたが、ネス湖にネッシーは本当にいるか決着をつけようとしたニュージーランドのNeil Gemmell教授の調査結果では、ネッシーの可能性があるとして当初予想された巨大ワニやチョウザメ科、首長竜のDNAは検出されなかったようです。記者会見でネッシーは本当にいないのかと聞かれたときのGemmell教授の答えは、「科学では検出されなかったとはいえるが、現実に本当にいないとまではいえない」でした。

これからも、パターン化された医療ではなく、患者さん一人一人のことを充分に考えた、上流の医療の実践、基礎的実験に裏付けられたファクトを土台としたFact-Based Medicineを追求して皆さんのお役に立てたいと考えております。

ネス湖のネッシー
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